プロ野球観戦をエサに生きているシカです。
今回の記事では2021年現在、「なぜ楽天イーグルスの補強は叩かれるのか」という問題について宮城県民目線で書いこうと思います。
昨年から野球観戦を始めたという「野球観戦ビギナー」の方にも分かりやすく書かせていただきます。
結論から言えば、
- 地域密着感が薄れたこと
- ファンに根強く残る「補強=悪」の方程式
- 東北・宮城県民の野球観
この3点に原因があります。順を追って説明させてください。
イーグルスを支えるファンとその背景
震災より深まった球団との絆
東日本大震災の際、選手たちは募金活動やボランティア活動に取り組んでくれました。本来であれば練習や休養に充てるはずの時間を削って。
震災から2年。地域の復興と共にドラフトで獲得した選手がチームを支える主軸に成長しました。また補強として他球団から獲得した選手の支えも大きかったですね。
- 田中 将大:神の子。24勝無敗の絶対的エース
- 嶋 基宏:精神的支柱としてチームを支える
- 則本 昂大:ルーキーながら15勝。奪三振量産機
- アンドリュー・ジョーンズ:得点源その1
- ケーシー・マギー:得点源その2
- 高須 洋介:チャンスに強い”必殺仕事人”
- 藤田 一也:守備のスペシャリスト
- 松井 稼頭央:メジャーも経験した優勝請負人
- 銀次:楽天が生んだ安打量産機
- 聖澤 諒:楽天の韋駄天
- 鉄平:走攻守どの場面でも仕事をしてくれる頼れる男
- 島内 宏明:打撃・守備に穴のない好選手
宮城県を、東北を支えてくれた選手たちが球団初の優勝に貢献してくれたのです。
多くのファンが涙した瞬間なのは間違いありません。
特に球団創設期から応援を続けたコアなファンにとっては「寄せ集め集団」と揶揄された初年度を知っているだけに、「共に苦労した選手たちが報われた!」「感動をありがとう!」という声が多く聞かれました。
こうして楽天イーグルスは地元、宮城県民にとって地域密着感型の球団、「おらが町のチーム」(宮城の方言で「私たちの町のチーム」という意味)となりました。
創設期の激動を戦い抜いてくれた元近鉄・オリックス選手には感謝しかない。また、選手育成はもちろん、宮城県にプロ野球の魅力を伝えてくれた野村監督。勝利に貪欲な姿勢を植え付けてくれた星野監督。魅力的な監督にも恵まれたことも大きな財産です。
再び低迷するチーム、薄れる地域密着感
優勝後、イーグルスはAクラス入りすることなく、成績は再び低迷します。
低迷しながらも、生え抜きである則本や新人王のタイトルを獲得した田中一基などがチームを盛り立てます。
そんな中で現役時代、イーグルスに所属していた平石洋介(現ソフトバンク)を監督にしチーム再建を目指しました。
就任一年目でチームは3位。近年の成績を見れば十分な順位であるとファンは思っていたところ、そのシーズンで監督は解任。
その決定を下した石井GM(ゼネラルマネジャー)に非難が集まりました。
浅村など有力選手を獲得する原動力となっていた石井GMですが、チームの改革を優先する姿勢に戸惑うファンが多かったと思います。
これまでの地域密着感が心地よかったファンの目には、石井GMの掲げるチーム改革が非情なものに映ったことと思います。
しかし、地域密着感が薄れてしまった背景には、長期にわたってチームが成績不振であったことを忘れてはいけません。
地域密着型・地元感が心地よく、魅力的なのはとてもよく分かります。
しかし、あの震災を経験したからこそ、球団設立時の苦しみを知っているからこそ、苦労した選手は勝利で報われるべきだと思うのです。
先ほど野村監督・星野監督の名前を挙げさせていただきましたが、両監督ともに勝利に貪欲でありました。だからこそプロ野球は面白いし、熱くなれるのだと思います。
東北・宮城県民の野球観
良くも悪くもプロ野球に触れる機会が少なかったのが東北・宮城の県民です。平成初期のプロ野球に見られた荒々しさはイーグルスにもファンにも感じません。
複数の球場に足を運ぶと分かることですが、イーグルスの応援はホントに野次が少ないんですよね。
決して会場の雰囲気が悪いとか冷え切っているということでないです。盛り上がる場面では普通に歓声や拍手も起きます。
「選手の活躍を温かく見守る」「試合観戦は夏祭りの延長線」そんな雰囲気があります。
これまでの地域密着型球団の在り方が現れていると言えます。
私の妻も、ある種のアットホーム感を演出することができていたイーグルスにハマっています。また震災を乗り越え、復興を支援したチームがファンの応援を受け優勝する…ドラマ性も非常に高く魅力的な球団と言えるでしょう。
警告!甘過ぎる東北民 太陽だけで作物は育たない
問題はここから。書くことをためらったのですが、これからのイーグルスのために敢えて書かせていただきます。
球団創設期から応援している層に散見されるのですが、生え抜き選手(ドラフトで獲得しイーグルスで育った選手)に甘いんですよね。
石井GMが大幅なチーム改革を推進したのは、あくまで戦力を底上げするためです。それも短期的・中期的に見て優勝を狙えるチームにするために。
危機感の薄いファンには「自球団の選手をもっと使ってあげてよ」とか「今、育成中だろう。もっと長い目で見ようよ」という意見があると思います。
しかし、私は「じゃあいつまで待てば結果出せるんですか?」「若手の台頭に期待した近年の成績はどうですか?」と思うのです。
不振の原因として特定選手や監督采配に挙げるのはためらわれますが、これも敢えて書かせていただきます。
怪我で長期的にローテに穴を空けた則本・岸。その代わりに試合を作ったのは誰でしょう。若手の先発投手ですか?それとも優秀とされた中継ぎ陣ですか?その中継ぎ陣は毎年安定した成績を挙げましたか?得点力不足は解消されたのでしょうか?
いずれも答えは出ていて、ローテの穴を埋めたのは同点またはビハインド(点数的に負けている)場面で登板した中継ぎ陣でした。試合を作って勝ち星を重ねたのは、ロッテにFA移籍した美馬。2020年シーズンなら金銭トレードで獲得した涌井。中継ぎ陣は好不調の波が激しく、2020年シーズンは逆転負けした試合数がリーグで最も多いチームだったのです。
しかし、得点力については、2020年シーズンにおいてリーグ内で最も高い数値でした。優勝したソフトバンクはリーグ3位であることを考えれば嬉しい数値です。
この得点の原動力はホームランのタイトルを獲得した浅村やシーズンを通して安定した成績を出した鈴木大地の両名であることは疑いようもありません。ただ、この2人は石井GMの補強によって獲得した選手ですよ。
- 則本・岸 両エース級投手の不在
- 先発投手陣、主に若手の伸び悩み(藤平・安楽・近藤etc…)
- 選手層の薄さ
日本プロ野球界を代表する投手を擁していながら、その選手たちが不振・不調・怪我の際に代わりに出場する選手が弱いのです。
イーグルスの若手選手は地元メディアでは「ポテンシャルが高い」「期待値の高い」「将来有望」と若手選手を褒めたたえる傾向にあるのですが、いかんせん1軍の試合で振るわない。
ここまで書かせていただいたことが、石井GMの強行ともとれるチーム改革が行われた背景にあることをイーグルスファンには考えてほしいのです。
2020年シーズンの得点力は石井GMの補強の成果です。そして、強行ともとれる補強政策の根底には、我々地元ファンの温室栽培とも取れる「甘い応援スタイル」があるのかもしれません。
根強く残る思想:補強=悪
野球観戦ビギナーの方へ解説しますと「補強=他球団から選手を獲得すること」と考えてください。
本質的な意味で言えばアマチュア選手を獲得する「ドラフト」も補強の仲間なのですが、多くの場合は「他球団からの選手獲得」を指します。
- 自球団の手薄なポジションの補強
- チームの若返り
- 他球団でくすぶっている選手の有効活用
以上3点が補強の要点です。ここまで見るとイーグルスの戦力が整っていくことだから悪いことには見えないでしょう。
私は補強自体は間違った選択だとは思いません。むしろ積極的に行うべきだと思います。
さらに踏み込んで書かせていただければ、資金に物を言わせて他球団の主力を強奪することが、一時期の巨人を想起させる点にも問題がありそうです。
地元にプロ野球チームが存在しなかった宮城県では、地上波で放送されるプロ野球中継は主に巨人戦。
当時、巨額の資金に物を言わせ、他球団の主力選手を獲得することで巨大戦力を構築していました。
他球団のファンからは「選手の強奪」「いくら育成してもどうせ有力選手は巨人に獲られる」と批判の声も上がりました。
そんな環境下で野球を見ていた宮城県民には巨人の補強によるチーム強化を快く思わないファンも多かったと思います。
事実、現在でも石井GMのチーム改革は避難されています。
地域密着・生え抜き選手の育成を進める球団経営が支持されるのは、資金力を全面に出した補強に強く反発しているからなのです。
また、球団の歴史が浅い分、選手の流出に対してファンが抵抗感を持つことも東北・宮城県民の特筆すべき野球観と言えます。
愛する選手を失うこと恐怖と向き合えない
石井GM就任以降、数多くのトレードが成立してきました。
補強の裏でチームを離れることになった選手もいます。
特に高梨・ウィ―ラ―の2名は在籍期間中に印象に残る活躍をしていたので、移籍には憤りを覚えたファンも多かったでしょう。
高梨はイーグルスの生え抜き選手で侍ジャパン(日本代表)にも選出される実力のある選手ですし、ウィ―ラ―は好不調の波はあれど貴重なムードメーカーでした。
2020年シーズンに優勝したソフトバンクは12球団随一の投手陣と勝ち試合も負け試合関係なくベンチ内に流れる活気の良さが注目されていましたから、シーズン終盤に高梨・ウィ―ラ―の2名を失ったイーグルスファンの喪失感は大きなものになったと思います。
しかし、直近のシーズンで高梨は制球難で、ウィ―ラ―も鈴木大地・ロメロの活躍によって出場機会を失っていたことを考えてください。
選手を支えるのは所属球団ではなくファンの存在
入団から活躍までの様子を知っている選手が他球団に移籍するということは、決して珍しいことではないのですが、応援していた選手がチームを去るのは悲しいことです。
しかし、選手目線で考えれば、出場機会を失ったまま飼い殺しにされるより、選手としてのピークを過ぎる前に他球団で出場機会を与えられるというメリットがあります。
選手ファーストで考え、「他球団に移籍しても活躍を期待してます!」と気持ちよく送り出したいところです。
他球団でイーグルス在籍時以上に活躍した時には、「○○選手はイーグルスで育ったんだぜ!」「彼の活躍を○○(移籍先の球団)と共有できる日が来るなんて…」と持ち前の温かい声援を送りましょう。
我々イーグルスファンは地域密着・地元感を言い訳にし、球団に対して、チームに不要な選手の放出や強気の補強を躊躇させていたのかもしれません。
野球観を変えて、おらが町のチームを再び優勝へ
イーグルスが優勝するには再びファンの声援が必要なのは言うまでもありません。
しかし、現状では球団の補強政策に非難する一方で、優勝争いに絡むことすら難しいというチームが置かれている現状を正しく見ることができなくなっているファンが多いように感じます。
これまでの温室栽培されたようなファンの野球観を変える必要があります。
「補強選手=カンフル剤・教科書」
補強によって薄れてしまった「おらが町のチーム感」。それと引き換えに得たのはパ・リーグ最強の得点力でした。
私も自球団に足りないと思われる戦力を他球団から補強するという考え方は間違っていないように思えます。
なぜなら、ドラフトで獲得した選手のみで優勝を目指すというのはあまりにも現実離れした目標になってしまうからです。
現にドラフトで将来を有望視された多くの若手投手陣は伸び悩んでいます。
賢明な楽天ファンには「補強=悪」という捉え方ではなく、球団内での競争を促進するためのもの。「補強=カンフル剤」と捉えていただきたいです。
または若手選手強化のための”教科書”とも言えるでしょう。
他球団からの選手獲得はチーム内競争を生むだけでなく、若手の手本となる教科書としての意味合いもあります。浅村に弟子入りし、共にお立ち台に上がった内田選手に胸を熱くしたファンも多いのではないでしょうか。補強選手と生え抜き選手の競演こそ今のイーグルスのファンが求めるべき姿では?
野球観を変えるためのヒント
オフシーズンは球界の制度や歴史、球団の考え方について知ることができる貴重な時間です。
このブログでも野球観戦に役立つ情報を発信していきますが、今より深く野球について知ることはプロ野球観戦をより魅力的にすることでしょう。
この記事で話題にしているイーグルスの石井GMが掲げるチーム改革の基礎となる考え方は、「マネーボール」という映画で知ることができます。
弱小野球チームのGMに就任したビリー・ビーン(演:ブラッド・ピット)が、統計から選手を評価するシステムを導入する。他球団では評価されていない選手が優秀な選手を集めて、ワールド・チャンピオン(アメリカ№1)を目指す。
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また、日本はメジャーリーグで取り入れられた制度を後追いで導入する傾向にあります。
メジャーリーグは日本のプロ野球と違って選手の移籍は日常茶飯事です。
シーズン中でもコロコロ変わります。これは適材適所を追い求めた球団の合理的判断の結晶であり、出場機会を貪欲に追い求める選手のハングリーさが生んだものと言えます。
「マネーボール」内でも大胆かつ迅速な選手のトレードが行われています。
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まとめ
- 補強により地域密着感が薄れたが、それは優勝を狙う以上しかたがないことを地元ファンは理解していない。
- 根強く残る「補強=悪」の方程式は簡単に変わらない。
- 東北・宮城県民の野球観には「おらが町」のアットホームさや震災からの復興に重ね合わせたドラマ性があった。
- そのドラマ性ゆえに愛した選手の放出には感情的になるファンが多く、イーグルスの補強(石井GMのチーム改革)に非難が集まっている。
- メジャーリーグ等の情報に触れ、日本プロ野球界の常識を疑うべし!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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